多摩から島根県隠岐の島までの路程は、さすがに遠い道のりだった。現地入りするまでには、七類港から島の玄関である西郷港までフェリー(2時間半)を利用したが、目的地までの車両走行距離は片道778kmに達し、時間は仮眠時間等を入れて23時間を要した。

 緑化仲間の脇文雄さんは、この隠岐の島で生まれ育ち、今から40数年前に島を離れたという。広い敷地の実家は、多くの樹木が生い茂り、うっそうとしている。毎年、帰省の折に木の伐採やせん定を実施しているが、男一人の作業では思うようにはかどらず、悩みの種とのことだった。

 ご本人からそんな苦労話を聞かされた緑化委員会の熟年族が、支援を申し出たのがきっかけで、今回の隠岐緑化支援の旅が実現した。実家にはお母さんが独り暮らしをされているが、90歳を越えるご高齢のため、今では施設に入所中であることも分かった。
 
 緑化支援作業には、緑化委員の高村、加藤、田上の各氏及び香村、それに脇さん本人を含め5人が参加、6月6日〜12日までの一週間の日程で隠岐の島に向かうことになった。

 ◇事前準備
 必要な作業着をはじめ、せん定バサミや軍手、また緑化委員会備品の電動ノコギリを借用し持参した。現地では、脇さん宅で寝起きするため、持っている人は寝袋を持ち込んだ。着替え用衣類を用意した上、自炊に必要な食材を積み込んだ。電気がま、鍋、食器類等は脇家の器具を借用することにしたが、調理用として特別に中華鍋をリストアップ、料理長が滞在中、腕を振るうことになった。

 ◇安全運転
 使用車両は、高村家の多目的自家用車。出発時から最初の休憩場所となった山梨県・釈迦堂SAまでは高村氏が運転したが、それ以降は加藤、脇両氏及び香村が交代でハンドルを握り、事故防止のため可能な限り休憩を取りながら安全運転で走行した。

 特に夜間は運転担当以外の人は努めて仮眠をとるなど休養を心掛けた。高村氏は往復とも一睡せずに常時、気を配ってくれたことに感謝したい。現地では、軽自動車のレンタカー1台を借り、せん定した樹木などの廃棄物処理運搬に利用した。

 ◇郷土料理
 滞在中の給食は、田上さんが全て腕を奮い、バライティに富んだ食事を用意してくれた。現地スーパー店で食材を調達したが、東京に比べ全般的に物価が高いようだ。滞在中の三日間、夕食時には脇さんの妹ご夫妻が来訪、刺身をはじめ数々の郷土料理を差入れてもらった。中でも妹さん料理による鹿肉の焼肉料理は全員が初めて経験する珍味で、酒の量も一段と進む羽目になった。

 ◇緑化作業
 脇さん宅実家には、高木用せん定バサミや刈り込バサミ、電動式草刈機などの道具がそろっていた。到着後、休む間もなく着替えをして作業に取り掛かった。緑化作業はみんな手馴れたもので、中でも高い場所でのせん定作業が得意の加藤さんは、早速、杉の高木に梯子をかけ枝下しを開始した。

 また、高村さんは数多い樹木のせん定を念入りに行い、瞬く間にきれいになった。それでも危険な高木には手が出さないようにしたため、心残りの作業になった。刈り込まれた樹木の廃棄物は、袋詰めしたり小さく束ねて2台の車両で数回にわたり廃棄物処理センターに持ち込んだ。

 ◇島内観光
 隠岐諸島は、島根半島から海上40〜80km、島前の3つの島と島後の1つの島からなり、大小180の小島群がこれを取り巻いている。脇さんの実家は島後にあるが、日本海に面した反対側に尾白鼻展望台がある。ここからはシベリア風の波浪を受けて浸食した断崖や有名なローソク島、馬背島の眺望を楽しむことができた。
 また、元弘の乱で敗れた後醍瑚天皇が流され行在所となった国分寺を案内してもらったが、残念ながら3年前に火災で消失し、今は台座の石のみだった。
 海岸では浄土ケ浦、都万海岸、白鳥海岸と見所は多いが、時間がなく果たせなかったのは残念である。

 ◇海釣り
 田上さんは、隠岐の島での大漁に備え、釣り道具一式を持参した。作業の合間をみて、中日に田上、脇両氏と一緒に買物がてら釣りをするため岸壁に立ち寄った。田上氏は早速釣り糸を垂れたが、魚は一向に餌を食う様子がない。私はこれまで魚釣りの経験がなく、余り興味がなかったが、田上さんに薦められて初挑戦、釣り糸を海に投げ入れた。ところが、餌の付け方も分からないまま、糸を垂らしただけなのに、次々と魚が掛かり、何とアジとメジナを合わせて12匹も釣り上げる大漁になった。

 これには自分ながらビックリ。この間、脇さんもアジ6匹を釣り上げ大騒ぎしたが、師範格の田上さんはなぜか、フグ2匹だけの寂しい釣果で、ひとしきりぼやきっ放しだった。素人は怖いもので競馬やパチンコでも初めての場合、不思議と勝運に恵まれると聞く。これが病みつきになるから恐ろしいと痛感した。でも初めての経験ながら、魚釣りの醍醐味を少しでも実感させてもらい大変うれしい思い出づくりになった。

 ◇任務達成
 現地滞在中は、連日好天続きだった。実家に到着して先ずビックリしたことは、敷地の広さと樹木の多さであった。遠くから眺めると家が木々に囲まれて森のようだった。それを全部作業するのには相当の日数を必要とするが、取りあえず表の半分に手を入れることにした。全員が協力の下、杓子定規ではあるが、少しでも綺麗になったかなと自己満足したりした。

 いずれにしても事故なく任務を達成できた喜びは大きい。12日早朝に多摩に無事帰還しましたが、今回の総走行距離は1,673キロ。中央、名神、中国及び米子の各高速道路を利用したが、往復とも土日の休日特別割引に合わせて日程を作成したため、高速料金が片道で、何と2千円少々で済んだ。特記すべき出来事でした。   (香村 義隆)
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